流れ行く月日と共に

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   今年は、いつ会う? もうすぐ今年が終わるけど。  萌恵からの相変わらず、素っ気ないメールに、宏樹は同じくらい素っ気なく返事をしてから、外を見た。仕事が終わって帰り支度をしていた。  「やっぱり天気予報は当たったか」  独り言を呟いて、初雪を窓越しにチラリと見た。会社を出ると、うっすら道路が白くなっている。積もる程では無さそうだ。同僚から一杯行かないか? と誘われていたので、誘いに乗った。  「何処に行くんだ?」  宏樹が訊ねる。  「あれだよ、高架下の飲み屋街」  「ああ、あれか。何処の店に入るつもりだ? 赤提灯か? スナックか?」  「居酒屋で、最近出来たもりって店だよ」  同僚が挙げた名前の店を宏樹は知らなかった。  「ツマミ美味いの?」  そんなことを訊ねながら高架下の飲み屋街へ、同僚と連れ立って歩き始めた。ウサを晴らす目的と、萌恵から連絡が来る時期になってしまった事から、逃れる目的があった。  だが、一時的に逃れたつもりになっても、所詮はつもり。萌恵と会う事は絶対なのだから。会うのが嫌なわけではないが……どうしたいのか、自分の心が解らない宏樹だった。
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