流れ行く月日と共に

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 CDコンポから聞こえて来るクラシックに耳を傾ける悠里。初雪が降ってから10日余りの店休日前日。意を決して、孝彦と話し合おうと思ったものの、まだ連絡を取っていない。  気持ちを落ち着ける為にベートーベンのエリーゼのためにを聴いている。一説によると、悪筆だったベートーベンなので、エリーゼという人物ではなく、テレーゼという人物だったと言われている。  テレーゼならば、ベートーベンが好きだった女性だから辻褄が合う。と言われているらしいが悠里にとっては、些細な事。大切な人の為に作曲をした。その事実が大切だと思うから。  この曲を聞き終えたら、連絡を取って孝彦と話し合おう。そう思いながら、既にエリーゼのためにの再生回数は片手を超していた。なかなか踏ん切りがつかないのだ。  そんな時だった。悠里のケータイが盛大に電子音を鳴らして、メールの着信を知らせる。身を固くしてケータイを眺めてから、親の敵を討つかのような形相で、相手を確認した。  梓からで、その後どうなった? という悠里を案じる内容に、悠里は肩の力を抜いてため息をついた。梓のメールで踏ん切りがついて、悠里は孝彦に連絡を取った。
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