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「それは、孝彦の考え方だと思う。でもね、お互いの家族に紹介までして、式場も探し始めて。一緒に暮らそうとしているじゃない? 家族になろうとしている。家族になっていたら、孝彦は何も言わないつもりだった?」
悠里は努めて冷静に話す。孝彦は少し考えてから言った。
「悠里ちゃん、仕事に関して何も言わないから、干渉をしないのかと思ってたよ。だから家族になっても言わなかったかもしれないね」
ハッとした。確かに悠里は孝彦の仕事に関して何も言って来なかった。興味が無いわけじゃない。だけど取り立てて気にしていなかった。
「孝彦、ごめん。私達、結婚の事をきちんと考えていなかったね。結婚式と結婚は違うのに」
悠里は頭を下げる。孝彦が悪いわけじゃない。努力をして来なかっただけ。
「うん、そうだね。ずっと悠里ちゃんの言う事を聞いて来ただけだったけれど、悠里ちゃんは結婚式の事だけを考えていたね」
「気付いていたの?」
孝彦の指摘は反論の余地が無い。
「うん。でも悠里ちゃんが気にしないなら良いのかな。って」
35歳だというのに、先の事を考えていなかった自分を悠里は恥じた。
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