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「ねぇ孝彦。例えば、これから先家族になるのに、共働きで構わないかな。私も喫茶店の店主だし。孝彦の収入で暮らして行けるかしら?」
「無理だと思うよ。一人暮らしならともかく」
悠里の質問に、孝彦は考える素振りもなく答える。考えていなければ答えられないはずだ。
「じゃあ共働きで良いわよね?」
「悠里ちゃん、店辞められないでしょ。……っていうかさ。ちょっとこういう事を考えてみた事は有ったけど。結婚生活というヤツを自分なりに考えて、出した結果。結婚をしても一緒に暮らさなくても良い気がするんだよね」
孝彦は自分よりも先に考えていた、と知って、悠里は如何に自分が浮き足立っていたのか、思い知った。しかし。続く一言に、二の句が継げなかった。
「悠里ちゃんと結婚したら、気軽に海外でボランティアとか出来ないだろうし、家庭中心の生活なんて、出来ない気がするんだ。悠里ちゃんは好きだけど自分の時間を削ってまで、一緒にいる必要が解らない」
孝彦の考えをようやく知って、悠里は愕然とした。ニコニコしているからといって、納得をしていたわけでは無いことを。
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