流れ行く月日と共に

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 「結婚……出来ないって事?」  震える声を抑え、震える身体を抑えて悠里は訊ねた。孝彦の行動がスローモーションのように見えた。  「結婚の形って色々じゃない? アフリカに行く前は、まぁ一緒に暮らすのが結婚だって思い込んでいたからさ。自分の時間が削られるのが結婚かなって思った。でも、あっちは様々な形が有って。それを見ていたら、結婚をするから、一緒に暮らすという考え方に拘らなくて良い気がした。だって、一夫多妻制とか未だにあるんだよ?」  孝彦の言い分を、幸か不幸か付き合いが長い悠里には良く理解出来た。おそらく影響を受けて来たのだ。世界には、今でも様々な風習や家庭生活があるのだ、と。一つの方法だけに囚われなくて良い、と。  「……そう、なのね」  孝彦の話を理解した時に、悠里の心は決まってしまった。  孝彦と話し合って、もう一度きちんと考えて結婚をするつもりだった悠里。  けれど、孝彦の考えを聞いてしまった今、孝彦と結婚をする事は出来ない。と決めた。悠里は、ケンカをするかもしれないし、もしかしたらそれが原因で離婚に至るかもしれない。
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