流れ行く月日と共に

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 萌恵からのメールには    クリスマス直前の三連休のどれか。  とだけ、返信。それっきり萌恵からの音沙汰はなく、宏樹は安堵なのか不安なのか良く解らない感情を抱く。  会いたいのか  会いたくないのか  と問われれば、会いたい。と答えられるが、ではどういう関係か。と問われれば、答えが無い。そんな関係のせいか、ただ純粋に会いたいと思えない。  年を経るに連れ、保守的になってしがらみが増えた気がする。だが、今年は出会って10年。節目の年。萌恵と、ある約束を交わしてその約束の期限。  その約束がとうとう果たされるかもしれない時が、来た。しかし、正直どうしようか迷っている。萌恵自身、あの約束をどう思っているのか。  そこまで、友人と飲みながら意識の半分で考えてから、ようやく解った。宏樹は、萌恵があの約束をどうしたいのか、知りたいのだ。忘れているのか、果たそうとしているのか、反故にしようとしているのか。  それを知るのが、怖い。だから、考えまいとして逃げている。自己の心理に気付いた宏樹は、今夜は酔えそうに無い事を悟った。
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