流れ行く月日と共に

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 「単なる賭けみてぇなモンだから気にすンな」  宏樹の顔に出ていたのかそんなことを口にした。宏樹は息を大きく吐き出すと、悠里から聞いた2人の結末を話した。  「成る程。……まぁ兄貴は……孝彦のヤツは昔から何かに影響をされやすかったから、そんなことだろうとは思っていたが」  タバコの煙を吐き出し、視線を煙に沿わせながら行彦は言う。  「姉は自らの落ち度を認めていました。結婚をゴールだと考えて、先を考えていなかった事を」  宏樹も同じように煙の行方を目で追う。  「どっちが悪いとかじゃあねぇな。別れるしか無かったんだろう」  行彦がそれだけ言うと黙り込んだ為に、それを機に宏樹は、やってきた電車に身体を滑りこませた。ドアが閉まるまで、行彦の姿は見えていた。  帰ってからメールの存在に気付いた。    三連休最初の土曜日。21時に待つ。  宏樹は無意識に深呼吸をした。悠里の幸せを願う気持ちに変わりはないが、悠里の事だけに構っているわけには行かず、自分自身の問題にしっかり向き合う時がきた、と腹を括った。
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