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「……話す前に聞かせて。宏樹は約束を守るつもり?」
先程とは打って変わった静かな口調と表情に、真摯な口調で返事をする。
「萌恵さんが、嫌じゃないなら……萌恵さんと付き合うよ。男と女として」
真っ直ぐに見つめると、萌恵は顔を赤らめて深呼吸をした。
「私の家ってちょっと厳しくてね。私の交際をあまり快く思われていなかったの。おまけに結婚相手も勝手に決められそうになっていて。私……結婚相手くらい自分で決めたいわって言ったの」
二杯目のマティーニを水代わりに飲み干して、萌恵は続ける。
「そうしたら、私の父が条件を出して来たの」
「条件?」
「私が決めた男に10年の間、年に1回だけ会う事を許す。その間、連絡をするのは私から。相手からは一切連絡をさせない。この条件をクリア出来た男となら、付き合っても良いし、結婚しても良い。っていう条件」
あっさり言ったが、それはそのまま宏樹が萌恵から出された条件だった。
「つまり、萌恵さんからの条件じゃなくて、萌恵さんのお父さんの条件ってこと?」
宏樹が確認をすると、萌恵が頷いた。
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