流れ行く月日と共に

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 「じゃあ萌恵さんは、別に俺じゃなくても良いわけだ。というか、結局お父さんが選んだ人みたいなものだと思うけど?」  萌恵本人ではなく、父親の条件なら半分は父親が選んだようなものだろう。  「だから、宏樹を選んだのは、私。それに父が言ったのよ。世の男というものは、ケダモノだから惚れた女がいて10年もオアズケなんか喰わないし、仮に10年待った男がいたら、そりゃ女と思ってない。って」  宏樹は物凄く説得力がある。と納得をした。確かに10年も惚れた女に手を出さない。とか、そもそも連絡も会う事も制限されている。とか、男である以上は耐えられない、と宏樹は思う。  男は自分の遺伝子を残す事が本能として備わっている。  女は命を育む事が本能として備わっているように。  男女が子を産み・育む事の意味は、突き詰めれば、種の保存と命を繋ぐ事だろう。  1年後の未来。10年後の未来。100年後の未来。その遥か先まで命が続くように、男女は子を産み・育むのだ。命を繋ぎ、未来を託せる相手を愛し守るのが、人間の男女の本能に、DNAに、刻まれた事。  宏樹はそう思う。それ故に男は自分の遺伝子を育む存在を目の前にして、何もない。というのはあり得ない。と萌恵の父は考えたのだろう。
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