流れ行く月日と共に

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 道の行き着く先は解った。悠里の人生の行き着く先はまだまだだ。思えば、様々な節目で道の先を選択してきた。今、思えば、孝彦と結婚をしない。という選択も道の節目だったと思う。  悠里は振り返った。  視線の先には通って来た桜並木。その先は悠里が暮らす家と街。今は結婚に対して焦りを感じていない。子どもを産む事も――焦っていなかった。  相手が見つからないから、では無くて。きっと心から結婚をしたい。子どもを産みたい。と思った時に、相手が現れる気がした。それでも現れなかったら……その時はその時。  焦るだけでは結婚生活も子育ても上手く行くとは思えない事にようやく気がついた。目は見えていても周りを見ていなかったと、悠里は反省した。  目を閉じる。  2月は14日のバレンタインデーの朝を思い出した。その何日か前に降った大雪。店は開けられず、雪かきもままならないで空を見上げているしか出来なかった1日。  その雪が溶けきらないうちに、バレンタインデーにまた雪が降り出して、ホワイトクリスマスならぬホワイトバレンタインになったその日。
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