流れ行く月日と共に

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 無くした恋。失った恋のように、儚く淡く消えていく雪。ただ、違うのは目には見えなくなるだけの雪と、目に見えなくても心に傷跡が残る失恋という事。  バレンタインデーなのに、痛んだ傷を思い出してしまった悠里は、その傷を抱えるように自室へと移動した。  別れを切り出す方も、別れを切り出される方も、多分心の痛みは同じ。その痛さも辛さも苦しさも、抱える重みも違うだろうけれど。  悠里はその重さを抱えて生きて行く事にした。もう決めたのだ。何が悪いとも誰が悪いとも言えないけれど、別れを切り出したのは悠里なのだから。  ふと、また爽やかな風が吹いて悠里は目を開けた。バレンタインデーも雪も途端に消え去って、春先特有の爽やかな風と柔らかな光が悠里の身体を取り巻いていた。  悠里にはまだ新しい出逢いも恋も訪れては……いない。けれど、それもまたそのうち、かもしれない。その相手が現れれば、の話で、結婚と同じ。現れる時は現れる。  今の悠里は、この坂を下って自分が暮らす街へ帰る事だった。休憩は十分に取った。  軽やかに足が前へと進み始める。風と一体化するように、一気に坂を下った。  (了)
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