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「……へえ、ますます会ってみたくなったな。」  鞍馬が興味深そうな顔をする。 「お前やあさ美ちゃんが気に入るなんて、どんな奴?」 「……別に普通の奴だよ。」 「いいや、お前が気に入る奴が『普通な奴』なわけがない。」 「そう言われてもだな……。」 「良いから教えろよ。」  「百聞は一見に如かず」と言ってはぐらかしたところで、このでっかい図体をした男は聞かないだろう。 (ああ、そうか……。)  高津はふっと笑みを零した。 「――お前に似てるな。」 「は? 俺?」 「ああ。」  普段はチャランポランな雰囲気を作っている鞍馬だが、基本的に人に親切だ。  その癖、相手が誰だろうと、売られた喧嘩をちゃんと買う豪胆さも似ている気がする。 「……ただ、あいつはもっと単純だから、考えがすぐ顔に出るんだが。」  裏も、表も無い。  生一本で、曲がった事は大嫌い。  職人気質なタイプだ。 「単純ってお前は言うけどな、お前みたいに難解な奴からしたら、大抵の奴は単純だぞ?」 「――そうか?」 「ああ。」  鞍馬は呆れ顔をしながら、サンドイッチに手を伸ばす。 「……でも、俺に似た奴って事は、かなり人間的に出来た奴だって事だな。」  高津はそう言ってサンドイッチを頬張る鞍馬に、くしゃりとその表情を崩した。  ――高津本来の笑顔。  作り笑いが巧くなった高津が、ごく時折見せる、昔ながらの笑顔だ。 「今の笑うところかあ?」 「今のを笑わないで、いつ笑う?」  周りの目があるから、忍び笑いをしているものの、余程、面白かったのか目尻まで下がっている。 「そんなに笑うなよなあ。」  そう言い咎めながらも、鞍馬も目を細めて笑った。  普段めったに笑わない高津が、こうして人間味ある笑みを零すことを知っている人間は他にどれくらいいるだろう。  きっとそう多くはあるまい。 「ああ、そうだ。例のメールの件な、今、調査してるけど『本人』は良いのか? 家族だけで。」 「構わない。自分の身は自分で守るように言ってある。」 「本人は新しい秘書か何かか?」 「……今まで話してただろうが。」 「――は?」  鞍馬の目が点になる。 「自分の身を自分で守るのも新人研修の内だ。」  高津の言葉に資料に書かれていた「内田 智和」の名前に思いを馳せる。 「……了解。家族については全力を尽くすよ。」  鞍馬は心底内田に同情をした。
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