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一方、その頃、噂された内田は二度寝から目を覚ました。
二日酔いはだいぶ抜けている。
「どう? 平気?」
「うん、さっきよりはかなりマシ。」
「良かった。」
あさ美が笑うと、内田は大あくびをして、「んーーっ」と伸びをしてみせた。
「これも真奈美様のお陰です。」
「よろしい。でも八割は……高津さんのお陰ね。後でお礼を言うんだよ?」
「う……。分かりました……。」
「こら、嫌そうな顔をしないの。あんなに面倒見のいいヒト、居ないよ?」
真奈美は「めっ」と言い、内田の頬をつんとつっ突く。
「……あのヒトは俺を玩具だと思ってるだけだよ。もしくは、御用聞きかなんかなんだ。」
「智和、それは高津さんの軽口だよ。あのヒトは優しいヒトよ?」
「どーだか。」
あさ美は内田の膝の上に乗ると額をこつんとぶつけてきた。
「年下なんだから、お姉さまの言うことは聞きなさい。」
「……年下?」
「そう。23なんでしょ?」
内田はこくこくと頷く。
「年上だったの? てっきり、同い年かと思ってた。」
「そういう事は、今度お店に来た時にみんなの前で言って。」
あさ美が呆気に取られた内田の様子にクスクスと笑った。
「……でも、金が続かないよ……。」
「真面目ねえ。高津さんに『奢ってもらおう』くらい言わないと。」
「いや、そういうわけにはいかないよ。」
内田が打って変わって神妙な口振りになるから、あさ美は笑うのをやめた。
「真奈美さん?」
「智和は、昼間に生きるヒトだよね。やっぱり。」
「ん?」
「『住む世界が違う』って言ったの。高津さんも智和が羨ましいんだろうな……。」
あさ美は笑いながら話していたが、その目は笑っておらず、一気に憂いを帯びた。
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