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 今日も午前中からオーブンの中に入れられているみたいに暑い。 「スーツの上着、脱いだら?」 「そーする。」  上着を脱ぎ、ネクタイを緩めながら、内田とあさ美はショッピングモールの二階のカフェに向かってエスカレーターを昇っていく。  それと入れ違いに久保と亜希が駅から続くトンネルを潜って遊園地内のフードコートの入り口やってきた。  すぐ近くに券売所がある。 「ワンデーパス二つ、下さい。」 「はい、畏まりました。」  久保がチケットを買う横で亜希は空を見上げた。  夏の日差しは眩しくて、キラキラしている。  日陰に行かないと肌がジリジリするくらいに暑い。 「お待たせ。」 「ううん、平気。」 「さて、まずは定番のアレにでも乗る?」  ワンデーパスを巻いて、久保は上を指差す。  その先には壁に穴が空いていて、「きゃあああっ!」という悲鳴と共にジェットコースターが降りてくる。 「い、いきなり、あれに乗るの……?」  亜希は顔を引きつらせながら、上を仰ぎ見る。 「私、高いところだめなんだけど……。」  そこまで言うと亜希は押し黙った。 『平気、平気。死なないから。』 『死なないけど……きっと泣き叫ぶ。』 『真顔でいう台詞じゃないなソレは。』  次いで、脳裏に浮かんだのは赤いチェックのシャツの裾が翻るイメージだ。 「――亜希?」 「……え。」 「どうかしたか?」 「う、ううん、眩しくて目が眩んだだけ。」  久保は「そうか」と笑うと、園内の地図を広げる。 「シュミレーションとか、お化け屋敷とかが通ってきたところにあるみたいだな。一旦、戻ってみるか?」 「ジェットコースターは良いの?」 「乗る前から怖い顔してるのに、乗ったらそれ以上だろう? お化け屋敷より怖い顔は勘弁だ。」 「何よ、それ!」  亜希は口を尖らせると、膨れっ面をする。  そして、手を振り上げるから、それを避けると、久保はトンネル方面に逃げ出した。 「鬼さん、こちら!」  亜希はトンネル内で待ち構えていた久保に抱き付くと、久保はわざとらしく「捕まったあ」と騒ぐ。 「――ちょっと、私より楽しんでない?」 「遊園地は『人生、初』だからな。」 「え?」 「親が仕事人間だったから、話には聞いてたけど、来た事がなくってさ。」 「そうなんだ……。」  年甲斐なくはしゃぎ喜色満面の久保の横で、亜希は戸惑いの色を見せた。
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