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トンネルを出ると眩しさに目を細める。
(私、誰と遊園地に来たんだろ……。)
赤いチェックのシャツは相変わらず頭の中をちらついたが、どうしても答えは出て来ない。
――ズキン。
警告するかのように、鈍く頭痛がする。
「具合悪いのか?」
「え?」
「顔色があんまり良くないから。無理しなくていいんだぞ?」
「……ううん、無理なんてしてないよ。」
久保が心配そうな顔になったから、亜希は考えるのを途中で止めた。
(――思い出そうとしなくても、突然、思い出すよね。)
そう自分を納得させると、看板を見つけて指差す。
そして、腕を組んでいた手を解くと、看板の近くで亜希は手招きした。
「ほら、久保セン、奥にも乗り物があるみたいだよ。」
「じゃあ、コーヒーカップにでも乗るか? どんなものかよく分からないけど。」
「コーヒーカップはね、真ん中に輪があってぐるぐると回すと、乗り物のコーヒーカップがぐるぐる回るの。」
「楽しいのか、それ……?」
「うーん、気持ち悪いかな……。」
亜希の感想に苦笑して「ひとまず乗ってみるか」と笑う。
亜希もふっと微笑んだが、次の瞬間に頬を引きつらせた。
『じゃあ、目一杯回してやる。』
『意地悪!!』
再び頭の中に声が響く。
「行くぞー!」
久保が数メートル先を歩んでいる。
――ズキン。
頭の痛みは抜けてくれない。
「乗り場はあっちみたいだ。」
「うん、分かった。」
そう言いながら、階段上から手招きする久保の後を追い掛ける。
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