―紅色―

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椿「…烝だって、何も言わないで 勝手に出てったじゃんか。だから 私も勝手にする。烝に何やかんや 言われる筋合いはないんだから、 止められたって入隊する!!!」 烝「…それ、本気で言ってるの?」 烝の顔から笑みが消え、声も地を 這うように低くなる。負けじと女 も睨み付け張り合っている。 何なんだ…この空気は、この俺に どうしろと言うんだ。 土「おい止めねぇか、何も入隊が 決まった訳じゃねー…これから、 コイツの力を見てから決める」 烝が不安そうに眉を下げて、俺を 見てくるのに苦笑いをして、女の 後ろ襟を引っ張った。 土「おら行くぞ猿女…ああ報告書 貰っていくからな」 椿「やい烝ー後で吠え面かかせて やるんだからなッ覚えてろよー」 きーきー言う猿女を引き摺って、 俺はその場を後にした。 辿り着いた道場は、まさに稽古の 真っ最中で、特有の防具の臭いと 汗の臭い、竹刀同士のぶつかる音 床を踏み込む音、気合いの声等が 聞こえてきた。 それらに昔の自分を思い出して、 懐かしさに目を細めた。 椿「…土方さんどうかしました?」 いや…と、だけ返して道場に足を 踏み入れた、手を止めて挨拶して くる隊士に手をあげて応える。 そして、指導を任せている男に声 をかけた。 土「おい永倉、指導中すまねぇが ちと場所貸してくれねーか?」 永「おう、土方さんじゃねーか!! 丁度、休憩入れようとしてた所だ 好きに使ってくれ」 人好きのする笑顔を浮かべた男、 永倉新八は、この組の剣術師範で あり二番隊の隊長も務める。 土「感謝する。…ああそれと誰か 独り借りてもいいか?」 永「いいけどよ、…何するつもり なんだ、土方さん」 土「入隊希望の奴の力がみたい。」 永「ほー…で、どいつの」 入口で待たせておいた奴に、声を かけると、頭を下げて道場に姿を 現した。それに永倉が声をあげる 永「ちょっ、待ってくれ土方さん 入隊希望の隊士ってまさか女!?」 土「…そのまさか、だ」
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