―紅色―

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同様に、隊士達も急に現れた女に ざわつき始める。中には惚けた様 に見つめる者もいた。 お前ら…少し顔がいいからって、 惑わされるなよ、中身はキーキー うるせぇ猿女だぞ。 土「…蓮条椿…あの近藤さんを 言いくるめて味方にした女だ。」 好奇の目に臆することなく、側に 来た女は、永倉に頭を下げた。 永「お、おいおい…本気なのかよ 今なら遅くねぇ、野暮な事はよせ なんなら俺の女にして…」 肩に置こうとした永倉の手を、女 は笑顔のまま捻りあげていた。 この女誑しが…内心、呆れながら 口を開く。 土「永倉ぁ…何言っても無駄だ。 まあ、そういう事だ竹刀を貸して やってくれ、それと相手は…」 辺りを見渡すと、男共が目を輝か せてこちらを見ていた。…阿呆だ 下心が見え見えだな。 ため息を量産しながら、見渡して いると、ただ独りだけこの状況を 興味ないとでも言う様に、素振り をする男を見つけた。 くくく…この上ない適任者だぜ。 土「おい、はじめ!!!」 名前を呼べば、能面のような顔が こちらを向いた。急に隣の永倉が 慌てはじめる。 永「いやいや土方さんッはじめは まずいって、アイツは手加減って 言葉を知らねぇ!!!」 土「手加減されちゃ、意味がねー」 無意識に笑った俺に、誰かが鬼と 呟いたのが聞こえた。 斎藤一という男は、三番隊の隊長 を務める、剣の腕も上から数えた ほうが早いだろう。 斎「………何用でしょうか、」 土「お前にコイツの相手を頼み たい。手加減はいらねー降参する まで闘い続けてくれ…出来るか」 分かりました。と斎藤は女を一瞥 して肩慣らしを始める。 いつの間にやら、永倉が隊士達を 端に寄せてくれたらしい。 土「…おい猿女、」 同じく、肩慣らしをする女に声を 掛ければ不満そうに振り向く。 椿「猿女って酷くないすか?」 土「そんなのどうだっていいだろ 戦って勝てたら名を呼んでやる」
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