―紅色―

14/16
前へ
/34ページ
次へ
回し蹴りを咄嗟に避ける、目と鼻 の先で爪先が通りすぎた。…女も 剣筋を読み、寸前で交わしている これは凄いな、想像以上だ…女と いう不利な条件でありながらも、 斎藤一と同等の剣の使い。 これは―――――――…使える。 一番隊の斬り込み部隊でも、監察 にして諜報活動させるのも、いや 暗殺部隊でもつくるか、 腕を組み直し、思案していると… 女は、両手に持つ短剣程の破片を 斎藤の左目へ向けて、鋭く放った 斎藤は驚きはするも、それを叩き 落とした。 …だが、それは罠にすぎなかった 弾いた時、女の口元が吊り上がり 次の瞬間に姿が消えた 己に飛んでくる破片に気が取ら れて斎藤は女から視線を外した それを女は狙っていたのだ。 見れば、斎藤の背後で首筋に竹の 破片を突きつける女… 竹刀が落ち、道場に…勝負あり!! という永倉の声が響いた。 お互い一礼をして、握手を交わす 斎藤も負けたってのに、清々しい 顔をしてやがる。 椿「土方さん、勝ちましたよッ!!」 満面の笑みで幼子の様に、こちら へ駆けてくる女。まだあどけない その姿に何故か胸が痛くなった。 コイツを組の為に利用しようと している自分と、それをさせたく ない自分とが、せめぎ合う。 土「ひとつ条件がある…隊士名簿 にお前の名を残す事はできない。 蓮条椿…お前には、新撰組の影に なってもらう。」 お前にとっては、なんの特もない これから先、たくさんの困難の壁 がお前の前に立ちはだかる。 ―――――それでも入隊するか? 椿「どんな仕事でも頑張ります」 …女は俺の目を見て、はっきりと 言いやがった。ほんとに頑固者だ 土「あまり気乗りはしねぇが… 約束は約束だ…蓮条椿、新撰組へ の入隊を認める」 椿「はいッ、有難うございます」 土「だが覚えとけ、俺はいつでも お前を脱退させる事ができる…。 まあ精々励むんだな」 俺はそう捨て台詞を残して、その 場を後にした。
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

313人が本棚に入れています
本棚に追加