―紅色―

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こうしてアイツは、新撰組の一員 となった。 分かっていた。この新撰組に入隊 してしまうと、アイツは女を捨て なければならない事ぐらい。 女として、当たり前の幸せを手に 入れられない事も。分かっていて ―俺は目先の利益を選んだんだ。 薄情な野郎だと、思われても仕方 がねぇ…あの時の俺は、新撰組と いう組織をでかくする為に、本物 の武士になる為に必死だった。 アイツに居場所がない事も、女の 入隊に反対する者から嫌がらせ を受けていた事も知っている。 何とかして辞めねぇかと、邪険に 扱っていた俺のせいで、皆が余り 関わろうとしなかったからだ。 それでも笑みを絶やさなかった。 泣き言も一切言わなかった。 ――――――――ーそんなある時 いつもヘラヘラ笑ってる猿女が、 陰で独り泣いていた事を知って 俺の中で何かが変わっていった。 何だかんだ言って、心配だった… 気付けば目で追っていた、困って ないか泣いてないか、そればかり を思っていた。 俺がアイツを庇えば益々、立場が 無くなると考えたから、何もして やれなかった。 もういっそのこと、アイツの本気 を皆に示せば、何か変わるのでは ないかと思い… お前の気持ちが、本気なら…女を 捨てる覚悟があるなら、その髪を 切れと懐刀を投げつけた。 周りが驚愕の表情で固まり、女も 同じく驚いていたが、意を決した ように鞘を抜いた。 女の本気を悟った隊士達が、必死 に止めにかかる光景を見て、ああ コイツらも何だかんだ言って… 気にはしていたんだな、と思った
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