―紅色―

16/16
前へ
/34ページ
次へ
その日を境に、徐々に隊士は猿女 を受け入れはじめた。 遠くで、挨拶を交わすアイツの姿 に…ふっと表情が和らいだ。 隣で、恐ろしい…と呟いた奴には 取り敢えず殴っておいた。 近「何か良い事でもあったのか?」 足を止めた俺を不思議に思った のか前を歩いていた近藤さんが、 振りかえった。 土「なんでもねぇさ…ああ、なあ 近藤さん。ひとつ聞いていいか」 近「なんだい、トシ」 近藤さんは再び廊下を歩きだす。 そんな後ろ姿に、疑問をぶつけた 土「…なんで、あの女を新撰組に 入隊させようと思ったんだ?」 目の前の男は豪快に笑うと、再び 振り向いた。 近「トシ…君の若い頃に似ていた からだよ。頑固で聞き分けがなく て、だけど真っ直ぐな目をして」 土「はあっ!?…俺と猿女がか!?」 聞いた俺が馬鹿だったと、脱力感 に襲われ、頭をかいた。 近「トシ…最近、あの子に髪の毛 を切るように言ったそうだね?」 真剣な面をした近藤さん、この顔 は怒っている時の顔だ。 近「…何が気に入らない、そんな 世間体ばかり気にしてたら、何も できないよ、いいじゃないか椿が 入って少しは印象がよくなるん じゃないかな損より益が大きい」 確かに猿女のお陰で、気性の荒い 壬生浪と呼ばれていた新撰組の 好感度が上がっていってる…。 土「分かってる、ただしこういう のは今回だけにしてくれよな…」 そっぽを向いた俺に、近藤さんは 素直じゃないとまた豪快に笑う。 そうだ。俺は昔から素直じゃねー 騒々しい足音と耳障りな煩ぇ声 を心待ちにしている自分がいる。 椿「土方さん、聞いてくだせーよ」 土「てめぇ、ちったー静かにしろ」 だからこの気持ちは、言わねぇ… ―――――初めてお前を見た時、 変わった女だと思った。女らしく ねーし、傷だらけだしよ…だけど 何故か惹かれんだ。そんなお前に        ―紅色― 終わり
/34ページ

最初のコメントを投稿しよう!

313人が本棚に入れています
本棚に追加