―空華―

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椿「喜助、そんな所に立ってない で喜助もこっちにおいでよッ」 俺は自分の立場を弁えて、影から 見守ろうと思うのに…どうして、 貴女は、どんなに俺が闇に紛れて いようとも見つけ出して、いつも 手を伸ばして下さるのですか、 そしてそれを拒めない己がいる。 焼き焦げてしまう事を知ってい るのに、貴女という太陽に縋ろう とする己がいるのです。 「ちゃう、兄ちゃんこっちを削ら んと全然飛ばへんわ!!!」 喜「…こうか?」 椿「おー、やっぱ喜助は器用だね」 主に誉められた事が嬉しく、口元 が緩むのが分かった。…口布して いて良かった、こんな面を主には 「あれ兄ちゃん…今、笑ろたか?」 喜「笑ってなどいない。」 「え、いや絶対、今わろたよね?」 喜「…笑っていない。」 そんなやりとりを椿さんが、密か に笑ってたなんて知らなかった。 …ただ、この穏やかな空気が心地 よかった。時が止まればと愚かに も思ってしまった己がいる。 太陽を溶かした様な夕方の空に、 竹トンボがいくつも舞っていた。 椿『……………綺麗だね、喜助』 どうして今頃、思い出したんだ… …いくら敵を倒したって、誉めて 下さる椿さんはもう居ないのだ、 もうこの世に…椿さんは居ない。 突然、貴女は俺達の前から居なく なってしまったんだ。
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