―紅色―

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土方視点――――――――――ー …あいつがうちに来たのは、よく 晴れた日の事だった。 隊士募集の受け付けも一息つき、 縁側に座り、一服していると… 「だから――っ――ください!!!」 何やら門の方で揉めている様な、 男女の声が聞こえてくる。 …たく、あまり面倒事を起こすん じゃねーよ、と内心で舌打ちして 火種を踏み潰すと、新撰組副長の 土方歳三は門へと足を向けた。 「だから、入れてくださいってば」 狼狽える門番の大柄な背が、見え てくる。大の大男が情けねぇー… 土「…ギャーギャー煩ぇんだよ、 何の騒ぎだ」 「ふ、副長!!!…こ、この女がッ」 振り返った門番の男は、なんだか 泣きそうな顔をしていた 土「…な、何があった」 余りの悲痛な面持ちに、顔を顰め ると、男の背から女が顔を出した 旅装束姿の女、化粧っ気がないが 整った綺麗な顔立ちに、たくさん の切り傷が目立つ 「この女、門の中に入れろって… 何を言っても聞かなくて…」 「この女じゃありません、蓮条椿 です。入隊希望です!!!」 ――-…誰が思っていただろうか この強い意志を孕む紅目の女が、 後に、新撰組零番隊隊長となり… 紅の夜叉と呼ばれることを 少なくとも俺は思わなかった。
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