―素直―

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彼女が、弾かれた様に顔を上げた その顔は驚きに染められており、 気づけば僕は、跪いて彼女の細い 手を握っていた。 蒼「…僕が君の病を治そう。」 彼女の目は見開かれ、ホロホロと 透明な涙が零れる。 蒼「僕は果たせない約束はしない 主義なんだ。…だからどうか」 だからどうか―――泣かないで、 蒼「僕に賭けてはくれないか。」 紡がれたのは、本当に伝えたい事 ではなく、色みのない内容だった それでも君は、微笑んでくれた… 紫「はははっ、それでそんな熱心 に調べ物をしているのか」 資料から目を離し、年甲斐もなく 棒つき飴を咥える彼に目をやる。 紫「ホント、君っていう人は…」 蒼「何だ。言いたい事があるなら はっきり言ってくれないか」 紫「僕が君なら抱き締めてキッス ぐらいはするよ?」 蒼「僕はそこまで獣ではない…。 君は、そんなんだから女に逃げら れるのではないか」 机の上を整理して立ち上がる。 紫「…そういえば、麗華お嬢様は どうするんだい?」 蒼「それは相手方が勝手に言って いる事であって、僕はここ(病院) を継ぐ気はない…僕は独立する」 その時は草壁君…と、ドアノブに 手をかけ半身ほど振り返る。 蒼「君も着いてきてはくれないか 僕には君が必要なんだ」 それだけ言い、部屋を出ていった そんな蒼汰の背に溜め息をつく。 紫「ふーそういう言葉は女の子に 言ってあげるといいのに…まあ、 僕は君の健闘を祈るよ。蓮条君」
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