―紅色―

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開口するやいなや、視界から女の 姿が消えた………と思ったら、 椿「局長さんっ私を新撰組に入れ てくださいッ!!!」 近「お、お嬢さんが!?」 土「ッ!?(…勘弁してくれよ、)」 畳に額を付け、土下座をしていた 椿「失礼は承知です、どうか私を 貴方のもとで働かせて下さい!!」 何故そこまでする。…分からない この女が理解できない、 ここは…と、我に返った近藤さん の声が静寂を破った。 近「お嬢さんのような女が来る所 じゃないんだ。人生はまだ長い」 その声に女が絶望の色をした顔 を上げた。 よし、俺はこれを待っていたんだ 頼むぜ…近藤さん。あんたに賭け てんだ。その女を説得してくれ 俺の心情を知ってか知らずか、更 に近藤さんが言葉を重ねる。 近「こんな所で、道を踏み外して はいけないよ。親御さん達だって きっと悲しむだろう」 あんたの、その薬にも毒にもなる 話術が欲しいよ、俺ぁ。 独り腕を組み、ウンウンと頷いて 座り込む女に目を遣ると、俯いて 肩を震わせていた。 お…説得が効いたのか、それとも 泣き落としか、さあどう出るよ。 次の出方を興味深く見ていると、 女がゆっくり顔を上げた。 椿「親なんてもういません。何故 女だと駄目なんですか?…たとえ 手足が千切れ落ちたとしても、盾 になることぐらいは、出来ます。 私はその覚悟で来ました」 その凛とした物言いに俺達が 面食らったのは言うまでもない。
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