―紅色―

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「土方さんこちらにいらっしゃい ましたか、探したんですよ~」 廊下の向こうから、報告書を片手 に歩いてくる人物を見た。 先程、少し名が出た山崎烝という 新人隊士だ。恐ろしく仕事が早い 有能な男に感心した 土「おう、すまねぇな厄介なのに 捕まっちまって…」 後ろを見遣ると女が、むくれた顔 で見返してきた。だがそれは俺の 肩を通り越して、烝の姿を捉える と満面の笑みになる。 同時に烝は、驚愕の表情で固まり 書類をその場に落とした。 烝「椿ッ!?」 椿「烝ー、やっと会えたーッ!!!」 名を呼ばれた女は、感動の再会を するべく、両手を広げ嬉しそうに 笑って駆け出す。 椿「久しぶりー会いに…あぎゃ」 だがそれは烝の華麗な足払いに よって派手に転び、叶わなかった 椿「うががが…酷い、久しぶりに 会った幼なじみに対する仕打ち」 顔面強打した女の背中を踏む烝。 烝「あはは~何が久しぶりなの? 何で椿がここに居るの~?」 笑顔で踏みつける姿が、眼鏡の男 と重なり、悪寒がした。 烝「十文字以内で簡潔に纏めて?」 椿「す、烝を追いかけてきたの」 ぴったり十文字の想いに、動きを 止め、目を丸くする烝がいた コイツもこんな顔をするのか、と 目の前で繰り広げられる光景を 見て内心思う。 烝「…まったく何いってるの~? 寝言は寝て言いなよ、ここは椿の 来る所じゃないんだ。今日は宿を 手配してあげるから、支度して」 椿「嫌だ、絶対に帰らないッ!!!」 まるで幼子の様に駄々をこねる 女は、俺が何を言っても折れなか ったのに、烝の言葉ひとつで泣き そうな顔をした。
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