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「少年って……今の餓鬼が……?」
「魔王尊かもね……?」
いつの間にか空を見上げていた艶香は、悪戯っぽい笑みを浮かべ、此方を見ていた。
「それじゃあ、アレが【鞍馬天狗】だって言うのか? あんな餓鬼がか?
ケッ!馬鹿馬鹿しい。さっさと行くぞ!!」
そう言って、艶香の手を取れば……
何故か、艶香はクスクス笑っている。
「案外、本当にそうだったのかもよ……?」
艶香が俺の刀を指差している。
促されるままに自分の刀に視線を落とした時に目に入ったソレは……
「羽……?」
刀の鍔に引っ掛かる様に残されていた白い羽は、天狗の羽扇子から抜け落ちたのか……と思える様なものだった。
「あの子、言ってたじゃない。
『我からの些かな贈り物』って……。
案外、本当に魔王尊の御加護を貰えたのかもね。
ふふふ……良かったじゃない、歳さん。」
「そうだとしたら、随分と茶目っ気のある神だな。」
「クスッ……!少年だからね。
まぁ、面白いからいいじゃない。
【鞍馬天狗】の正体は少年でした……なんていうのも、ね?」
「そうだな…」と言おうとした時、視界を掠める白い華。
どうりで寒い訳だ……
この勢いなら積もるかも知れねぇな
「降ってきたな……」
隣で目を細め空を見詰める艶香に、寒くても頬が緩む。
「……ん。この雪の花も魔王尊からかな?」
繋いでいた手を離し、代わりに肩を抱き寄せてやる
「……かもな。」
互いを温め合うように身体を寄せ合い、俺達はその場を後にした。
『また訪ねてくると良い。其方等なら何時でも歓迎しよう……。』
あぁ、またな。
洒落た神様よ。
今度は……桜の季節に来てやるぜ。
《終》
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