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1.仕事
満月の光が優しく照らしている街中のとある一角に一人の少女がいた。雑居ビルで今は、使われていない壁に寄りかかりその先にいるであろう人々を眺めている。少女の名前は、時輪 雪。
「遅い。」
腕を組み夜空を見上げてため息のような台詞が零れる。その様子は、まるで誰かを待っているのだとわかるくらいだった。
「遅い。何でいつも私が待たされないといけないのよ。」
どこか怒りのような呆れとも取れるような声が闇に零れる。
「それは、悪かったな。」
そのとき闇に紛れて一人の男性が姿を現した。見た目の歳は、大学生くらいだろうか。青年という年齢には、見えないがこれでもまだ高校生だという。
「遥…。」
「よ。雪。」
片手を上げ挨拶を入れる遥こと鴇時 遥は、今日の仕事の相棒だった。
「さて、今回の仕事は?」
仕事というキーワードが入れば二人の雰囲気は、一気に変わる。雪の瞳には、光が入らずまるで漆黒のようになり、遥も鋭く光るような瞳に変わっていくのである。
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