ハバネロと、チーズ

3/6
前へ
/17ページ
次へ
「なぁ麗奈。この部活って何をするんだ?」 「面白い事よ。」 「面白い事……?そんなヒントじゃ解らないよ。」 「ヒントじゃないわ。面白い事をする。それがこの部活のレーゾンデートル…。」 一体何だというのだろうか。 面白い事………? 何度考えても解らない。 「………子づく「兎月、黙ってろ。」はいっ!」 男女が2:2でちょうど良い割合の時にそんな事を言うんじゃないっ!! 「そうね、具体的には面白い事をして、学校の皆に楽しんでもらうの。私達はその為の役者。エンターテイナーなのよ。」 「例えば?」 「それを今からここで考えるんじゃない。」 そう言って麗奈は旧校舎を……いや、新・旧校舎を指差す。 「さ、入りましょ。……私達の、秘密基地に!」 パァッと。 いたずら盛りの少年のような。恋を知らない幼い女の子が「あのこがすきなの!」と答えた時のような。 心の底から何かを沸き上がらせたような笑みだった。 あぁ、こいつはこんな笑い方も出来るんだ。 そう思った瞬間には、無意識に胸を押さえていた。 不意討ちだった。 心臓が肋骨をへし折らんばかりに躍動する。 「るーやー?どうしたのー?」 萌え上がる緑の中、自分が1人になっている事に気がついた。 「すまん、すぐ行く。」 春の陽気って、本当に怖い物だな……。 少年は、心に芽吹いたそれを自覚するのを拒んだ。 いや、この表現は的確では無いだろう。 誰もが心に抱いている、はち切れんばかりのツボミ。 それが初めて花開く時というのは、誰しも気恥ずかしさで顔を染めるものである。 「絶対に違う……単純に可愛かっただけで、決して……。」 「るーや?」 「な、なんでもないっ。」 故に少年は否定する。 己の心の、その「花」を。 image=478546675.jpg
/17ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1人が本棚に入れています
本棚に追加