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「なぁ麗奈。この部活って何をするんだ?」
「面白い事よ。」
「面白い事……?そんなヒントじゃ解らないよ。」
「ヒントじゃないわ。面白い事をする。それがこの部活のレーゾンデートル…。」
一体何だというのだろうか。
面白い事………?
何度考えても解らない。
「………子づく「兎月、黙ってろ。」はいっ!」
男女が2:2でちょうど良い割合の時にそんな事を言うんじゃないっ!!
「そうね、具体的には面白い事をして、学校の皆に楽しんでもらうの。私達はその為の役者。エンターテイナーなのよ。」
「例えば?」
「それを今からここで考えるんじゃない。」
そう言って麗奈は旧校舎を……いや、新・旧校舎を指差す。
「さ、入りましょ。……私達の、秘密基地に!」
パァッと。
いたずら盛りの少年のような。恋を知らない幼い女の子が「あのこがすきなの!」と答えた時のような。
心の底から何かを沸き上がらせたような笑みだった。
あぁ、こいつはこんな笑い方も出来るんだ。
そう思った瞬間には、無意識に胸を押さえていた。
不意討ちだった。
心臓が肋骨をへし折らんばかりに躍動する。
「るーやー?どうしたのー?」
萌え上がる緑の中、自分が1人になっている事に気がついた。
「すまん、すぐ行く。」
春の陽気って、本当に怖い物だな……。
少年は、心に芽吹いたそれを自覚するのを拒んだ。
いや、この表現は的確では無いだろう。
誰もが心に抱いている、はち切れんばかりのツボミ。
それが初めて花開く時というのは、誰しも気恥ずかしさで顔を染めるものである。
「絶対に違う……単純に可愛かっただけで、決して……。」
「るーや?」
「な、なんでもないっ。」
故に少年は否定する。
己の心の、その「花」を。
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