第1話

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私という人間はごく普通の高校生です。 特にこれと言った特技がある訳でもございません。 そのため友人のしでかしたおもちろいエピソード、その日心に残った出来事を皆様に共有することができればと思います。 では、最初のお話。 私には愉快な友人が数多く存在しています。 本日はその内の一人、M氏がせっかく自宅で終わらせた宿題を忘れるという大事件が起こりました。 皆さんも経験があるのではないのでしょうか? かくいう私も前科者、いえ、恥ずかしながら常習犯でございます。 そのような点ではM氏は私の悪友です。 彼はせっかく終わらせた宿題を忘れたショックのあまり、ゴキゲンが斜めでございました。 痛いほどに気持ちのわかる私はどこか中毒じみたこの「忘れ物」という罪を憎みました。 そしてとうとうその授業がやってまいりました。 他の生徒は先生のご機嫌に立ち向かう宿題という剣を携えておりましたが、M氏はお分かりの通り、丸裸です。 私は哀れに思い、ふと隣のM氏に視線を移すと 彼は傲然と胸を張り、獲物を捕らえる虎のような眼差しで先生を見つめていました。 そこには一点の迷いも無く、気迫に満ち満ちていました。 そして彼は、よく通る声でこう言い放ったのです。 「ここに宿題はない。しかし、確かに私は持ち帰り、そして宿題を完成させた。その事実こそが、本当に大切なのでは?」 私だけでなくその教室にいた生徒全員が心を強く打たれました。 彼の魂からの言葉に、私は感涙致しました。 彼は散りました。 ではまた明日
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