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そんな私の右手がギュッと握りしめられると、すぐに現実へ引き戻された。
目を開けると、悠哉が私を優しく見つめている。
繋いでいる手をより強く握りしめ、もう片方の手で私の頭をポンポンした。
「…あの、私…」
話しかけようとしたら、その言葉をすぐに遮った。
「なる、そろそろ俺たちは、ここを出るとしよう」
そう言って、ニコッと笑った。
…え?
出るの?
…一緒に?
頷く間もなく、悠哉は握った手をグイッと引っ張っていく。
私はただ、引っ張られるままについていくことしかできなかった。
会場のなかを歩いていくと、みんなの声があちこちから聞こえてくる。
「え!?社長とあの秘書、付き合ってるの!?」
「あれ?あの子ってたしか、高野課長とできてるんじゃなかった?」
そんな声を聞きながら、私は悠哉の背中を見ることで精一杯だった。
専務と愛美さんの前までくると、悠哉が立ち止まった。
「おい、そろそろいいだろ?俺となるはさきに出るからな」
「ええ、充分です」
そう返事する専務の声を、私は悠哉の後ろで聞いていた。
すると、悠哉の脇から愛美さんがヒョコッと顔を出してくる。
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