事実

8/17
前へ
/37ページ
次へ
今にも泣きそうになりながら、顔が熱いのを気にかけながらも、後ろを振り返ってみた。 お腹を押さえながら、大谷くんが爆笑している。 「アハハ!なるちゃん、ウケる!」 …ちょっと!ウケるってなに!? 笑いすぎじゃない!? 大谷くん、ひどいってば! 涙をこらえながらムッとしていると、そんな大谷くんの右肩越しに、高野課長の姿が見えた。 こっちを見て、少し遠慮がちにクスクス笑ってる。 うっ…、もうやだぁ…。 せっかく高野課長黙っててくれてたのに、まさか、こんな場所で…、自分が…。 あぁぁぁぁ! 心の声が漏れそうになり、なんとか必死にこらえた。 そしてさらに目線を右へ移すと、いつものように爽やかに微笑む専務が…。 いつかこうなるのは分かっていましたよ的な、その笑顔。 その隣で、キャッキャキャッキャとはしゃぐ愛美さん。 あぁぁぁぁ! やめて! こっち見ないで! 私ってば、ホントどれだけアホなんだろう! 全ての思いを何とか胸の中に抑えて、私は目をつぶり、現実逃避を図った。 これが夢でありますように。 きっと何かの間違いだ。 …あり得ない。
/37ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1135人が本棚に入れています
本棚に追加