専務不在!

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「その子ね、伊藤ちゃんって言うんだけど、結婚パーティのとき社長に一番最初に飲み物渡してたわよ。たまたま目に入って見てたんだけどさ。伊藤ちゃんはたぶん、社長のこと好きなんだと思う」 …うそ。 そうだったの? 私は、柏木さんから目を反らし、床を見つめた。 …悠哉のことが、好きなんだ…。 だから、あんな…。 また胸が痛みだしてきた。 だって、きっとその伊藤さんみたいな人は、たくさんいる。 いきなり秘書になった私が、社長の恋人だなんて知ったら、それは、いい顔しないよね。 ああ、やっぱり私は、まだまだ甘い。 考えが、甘すぎる。 黙ったまま顔を下げてると、柏木さんが肩をポンと叩いてきた。 「ちょっと!顔、今度は死んでるわよ」 「…あ、はい」 アハハ…、たしかに生きた心地しないかも。 「でもさ、秘書になる前からお互いいい感じで、それで秘書になったとかではないの?」 「…え、いや、違います」 そう答えると、またも柏木さんはおかしそうに首を傾げていた。 「私ね、別に反対じゃなかったのよ」 「え?何がですか?」 尋ねると、柏木さんが真っ直ぐ見つめた。
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