1167人が本棚に入れています
本棚に追加
「その子ね、伊藤ちゃんって言うんだけど、結婚パーティのとき社長に一番最初に飲み物渡してたわよ。たまたま目に入って見てたんだけどさ。伊藤ちゃんはたぶん、社長のこと好きなんだと思う」
…うそ。
そうだったの?
私は、柏木さんから目を反らし、床を見つめた。
…悠哉のことが、好きなんだ…。
だから、あんな…。
また胸が痛みだしてきた。
だって、きっとその伊藤さんみたいな人は、たくさんいる。
いきなり秘書になった私が、社長の恋人だなんて知ったら、それは、いい顔しないよね。
ああ、やっぱり私は、まだまだ甘い。
考えが、甘すぎる。
黙ったまま顔を下げてると、柏木さんが肩をポンと叩いてきた。
「ちょっと!顔、今度は死んでるわよ」
「…あ、はい」
アハハ…、たしかに生きた心地しないかも。
「でもさ、秘書になる前からお互いいい感じで、それで秘書になったとかではないの?」
「…え、いや、違います」
そう答えると、またも柏木さんはおかしそうに首を傾げていた。
「私ね、別に反対じゃなかったのよ」
「え?何がですか?」
尋ねると、柏木さんが真っ直ぐ見つめた。
最初のコメントを投稿しよう!