専務不在!

14/16
前へ
/32ページ
次へ
柏木さんは了解したあと、もう一度一礼し、エレベーターへと向かった。 「なる、お前も取引先の仕分けについては頭に入れておくように」 「はい」 エレベーターが閉まり、柏木さんの姿が見えなくなる。 すると、悠哉は私の頭に手を乗せてをポンポンしてきた。 顔を上げると、ニコッと微笑む悠哉と目があった。 「で、…出勤は、何事もなかったか?」 その言葉を聞いて、頬がほんのり熱くなる。 …もしかして、心配してくれてた? 私は悠哉を見つめながら、ニッコリ笑ってみせた。 …まだまだ、心苦しくなることがあると思う。 くじけそうになることもあると思う。 でも、悠哉のそばにいれるなら、大丈夫。 大丈夫だよ。 そんな意味を込めながら、笑顔で悠哉を見つめる。 悠哉の手が、頭から頬へ回ってきた。 力強い瞳が、ただ私に注がれた。 この、ほんの少しの見つめあってる時間が、私にかなりの力を与えてくれてることに、悠哉は気づいてるかな? しばらくすると、悠哉のケータイが鳴り出した。 私の頬から手が離れ、悠哉は電話に出て話はじめた。 「はい、夏野です」 私は、静かに待っていた。
/32ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1167人が本棚に入れています
本棚に追加