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柏木さんは了解したあと、もう一度一礼し、エレベーターへと向かった。
「なる、お前も取引先の仕分けについては頭に入れておくように」
「はい」
エレベーターが閉まり、柏木さんの姿が見えなくなる。
すると、悠哉は私の頭に手を乗せてをポンポンしてきた。
顔を上げると、ニコッと微笑む悠哉と目があった。
「で、…出勤は、何事もなかったか?」
その言葉を聞いて、頬がほんのり熱くなる。
…もしかして、心配してくれてた?
私は悠哉を見つめながら、ニッコリ笑ってみせた。
…まだまだ、心苦しくなることがあると思う。
くじけそうになることもあると思う。
でも、悠哉のそばにいれるなら、大丈夫。
大丈夫だよ。
そんな意味を込めながら、笑顔で悠哉を見つめる。
悠哉の手が、頭から頬へ回ってきた。
力強い瞳が、ただ私に注がれた。
この、ほんの少しの見つめあってる時間が、私にかなりの力を与えてくれてることに、悠哉は気づいてるかな?
しばらくすると、悠哉のケータイが鳴り出した。
私の頬から手が離れ、悠哉は電話に出て話はじめた。
「はい、夏野です」
私は、静かに待っていた。
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