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数メートル先を走る敵は、入り組んだこの街の路地をすべて把握しているのではないかと思わせるほど、走りに迷いがなかった。曲がり角にぶつかることも厭わず、常に全速力だ。
(あんな全力で走ってたら、普通はブレーキかけられず壁に正面衝突……)
そうなるはずだが、風に踊る羽のような軽さを感じさせる走りで、減速を行わずにターンを決める。
サラは周囲の地形をすべて把握しているアドバンテージでなんとか追いついていたが、
(ほんっと、速いなあ)
互いの速度が拮抗している以上、捕らえられるかどうかは持久力にかかってくる。
しかし、サラが思わず家屋の壁を爆破してしまうほどにイライラが募っていたのは、
(あいつ、ぜんぜん速度が落ちない……私、もう何分走ってるんだろ)
この耐久戦が延々と続いていたからでもある。
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