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少年はそんな少女――仕えるべき主の目を、しっかり見つめたまま続ける。
「私……僕は、あなたとの身分の差をしっかりわかっています。こんなことを言うのは許されない、そのことも了承しています」
「……あの、」
「ですが、どうしても、これだけは伝えておきたかったのです」
少年は続ける。声が震えてしまわないように。手をしっかりと握って。
「姫様が、姫様でなくなってしまう前に。僕と離れてしまう前に」
いまだけは少女に、自分が王族の直系であることなんか忘れてほしかった。
「お慕い申し上げます、ミイナ様」
少年は少女に跪く体勢から立ちあがり、視線の高さを合わせた。
少女の目は真っ赤になっていた。涙に潤み、端からはすでに涙があふれている。
「……あの、ごめんなさい、マイメル」
「……なんでしょうか、姫様」
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