夜闇の攻防

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「――っ」  ミイナはマイメルの身体を、きゅっと抱きしめた。マイメルの首筋に熱く火照った息をぶつけるみたいに、ミイナは顔をうずめる。  言葉はなにも続かなかった。二人ともわかっているからだ。この時間が長くは続かないことを。マイメルはミイナの、力の加減を間違えたらすぐに折れてしまいそうな身体を、優しく包むように抱きしめ返した。詰められていた息がミイナから漏れて、互いの熱が高まる。  しばらくそうして、やがて身体を離す。ミイナの手は、マイメルの首の後ろで組まれたままだ。  どこか熱に浮かされた目で見つめあう。  そうしてから、ふとマイメルは考えた。  ――あとひとつ、何かきっかけが来てしまったら。  もう引き返せない。頭の妙に冷静な片隅が、一瞬だけ踏み込むのを躊躇する。 そしてその判断が、彼らの寿命を延ばすことになった。  マイメルに瞬間の冷静さが走った瞬間、ミイナの背後の壁が爆音とともに吹き飛んだのだ。
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