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鞘を握っていた手を緩め、放す。鞘が重力に捉えられる。
その瞬間に、マイメルの視界を黒い影が走った。それはマイメルと交錯する方向に移動している。
マイメルは反射の動作で、正面への突きを放った。影の手元に鈍く光る刃物が見えたからだ。
そこにいる人間の耳をつんざくような、甲高い金属音が響く。
しかし影の動きは止まらない。短剣でマイメルの長剣を軽々といなし、獣のように俊敏な動作で懐に潜り込んでいく。
マイメルは突きの際に踏み込んでいた右足で地面を押し、正面に飛ぶ。そうして影とすれ違った。
その瞬間、影と視線が絡んだ。
「――えっ」
マイメルはその目と顔に、思わず気の抜けた声を漏らす。
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