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「ごめんマイメルっ、弁償分は経費で落ちるから心配しないで!」
「あのいやそういう問題じゃなくて、」
「ホントごめんいま仕事中だから! じゃね!」
サラは着込んでいる黒衣――皇女騎士団の正装を翻して、部屋のドアから高速で出て行った。入場のときのようにぶち抜いたりはせず、きちんと常識的な開閉の動作を行って。
バタン! と無遠慮に大きな音を立ててドアが閉じた。そして同時に、木がきしむ不安な音がマイメルの周囲で響き始め、
「ってあああああ! 壁があああああ!」
ぶち抜かれていた壁から建築が安定を失って、家屋そのものが崩れ出した。
マイメルはすぐにミイナを抱え、壁から家を脱出。小さいながらも自分だけの城である家が崩れていくのを、近所の屋根から見守った。
「……国の経費で一軒家を建てる確約をもらったのって、もしかしてこの国の歴史上で僕だけじゃないだろうか……」
ミイナを腕に抱えてそんなことをつぶやきながら、城下町に起こっている異変をマイメルは眺めていた。
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