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「だ、大丈夫です。なんでもないです」
顔を熱くさせて、そう返事しながら首を左右に振った。
これ以上、専務のイタズラの的になるのは避けなくちゃ!
「…なる?…何やってるんだ?」
…え!?
声をかけられ、手を専務につき出したままパッとエレベーターのほうを振り向くと、そこに悠哉が立っていた。
「あ、ああ!悠哉!」
い、いつの間に!?
慌てて手を下ろし、悠哉に一礼した。
「あ、おはようございます!」
顔をさらに真っ赤にさせていると、専務がクスクス笑い出す。
その様子を見た悠哉は、目を細め、どこか面白くなさそうな表情を見せていた。
悠哉が私たちの近くまで歩いてくると、今度は専務が挨拶をする。
「社長、おはようございます。不在の間、ご迷惑をお掛けしました」
その言葉に、悠哉が専務を見た。
「ああ、おはよう。…で、どこ行ってきたんだ?」
「ええ、主にイタリアです」
「へぇ、イタリアね。うらやましいもんだ」
私は、悠哉と専務の間に立ったまま、会話を聞いていた。
「10日間は短かったか?」
「いえ。そんなことはありません。長ければ長いにこしたことはないですが」
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