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社長室へ入りデスクへ腰かけると、部屋をノックして続いて片桐が入ってきた。
「社長、連休の間、本当にありがとうございました」
「いや、いいんだ。休みをとれと言ったのはこの俺だ」
そう言っても、片桐は俺に頭を下げていた。
「それより、…話がある。座れ」
俺の言葉に引っ掛かったのか、片桐が見つめてくる。
頷いた後、ソファーに腰かけた。
「お前がいない間に、少しやっかいなことになっている」
顔をあげ、またも俺を見つめてきた。
「…やっかいと言いますと?」
俺はふぅと一息ついた後に、話を続けた。
「お前が戻ってきてから進めていくはずだった、N社との取引の話はなくなった」
そう伝えると、片桐の眉がピクッと動いたように見えた。
「…なくなったとは、どういうことですか?」
片桐が、なるべく冷静に繕っているようにも見えた。
俺も声のトーンを変えることなく、落ち着いて話を進める。
「この前、担当の宗像が早く話を進めたいと言ってきた。もちろんすぐに対応はしたが、それよりも先に、他のところといい条件で取引が成立したらしい」
片桐の表情が、徐々に曇っていくのがわかった。
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