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「…何かあったとき?」
そう尋ねると、ゆっくり私を見つめてくる。
「ああ。…そうだな、例えば…」
悠哉が天を仰いだ。
そして再び私に視線を戻す。
「俺が出張中、お前がボヘッとしながら歩いてるとする」
…ちょっと。ボヘッとしながらってどういうこと!?
「心ここにあらずのお前がハッとしたとき、そこは全く知らない場所だった。…そういうときだ」
「そういうときって、それ、道に迷ったときって言いたいんですか!?」
すぐに聞き返すと、悠哉はおもいっきり笑った。
「アハハハ!察しがいいな。その通りだ」
「ちょっとそれって…、絶対私のことバカにしてません?!」
そう言うと、さらに悠哉が声を出して笑う。
その笑顔を横目で見ながら、私は自分のケータイを手にし、専務のアドレスを登録しはじめた。
もう!
例え道に迷ったとしても、そんな子供じゃないんだから1人で戻れるってば!
そう思いながらブツブツ呟いていると、悠哉が私の側にフワッと近づいてくるのがわかった。
一生懸命カチカチしている手を上げたかと思うと、悠哉が私の足の上に頭を乗せてソファーにゴロンと横になった。
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