さざ波-2

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「とても正直な、かわいらしい子ですね」 そしてクスクス笑う。 「…でも、ちょっと意外だったかなぁ。近くでよく見ると、どこにでもいる普通の女性ってかんじでしたよ」 俺は、泉から目を反らすことなく話を聞いていた。 「夏野社長だったら、もっと釣り合う女性が他にたくさんいるのに…。彼女のどこがいいのか、俺にはさっぱりわからないなぁ」 …やめろ。 お前がなるのことを語るんじゃない。 好き勝手にしゃべるのも、大概にしろ。 ふざけるな。 そう強く、言ってやりたくなった。 …だが。 「…それでいい」 「え?」 俺は、自分の手を握りしめた。 感情を押さえ、冷静に。泉を見つめる。 「お前がなるのことを知る必要はない。あいつの魅力は、俺がちゃんと知っている。…それで、充分だ」 しばらく見つめた後、ゆっくり振り返る。 そして、足を進めた。 エレベーターのボタンを押すと、すぐにドアが開く。 俺は、後ろを振り返ることなく乗り込んだ。 ボタンを押してドアを閉め、一階へと向かった。
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