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「とても正直な、かわいらしい子ですね」
そしてクスクス笑う。
「…でも、ちょっと意外だったかなぁ。近くでよく見ると、どこにでもいる普通の女性ってかんじでしたよ」
俺は、泉から目を反らすことなく話を聞いていた。
「夏野社長だったら、もっと釣り合う女性が他にたくさんいるのに…。彼女のどこがいいのか、俺にはさっぱりわからないなぁ」
…やめろ。
お前がなるのことを語るんじゃない。
好き勝手にしゃべるのも、大概にしろ。
ふざけるな。
そう強く、言ってやりたくなった。
…だが。
「…それでいい」
「え?」
俺は、自分の手を握りしめた。
感情を押さえ、冷静に。泉を見つめる。
「お前がなるのことを知る必要はない。あいつの魅力は、俺がちゃんと知っている。…それで、充分だ」
しばらく見つめた後、ゆっくり振り返る。
そして、足を進めた。
エレベーターのボタンを押すと、すぐにドアが開く。
俺は、後ろを振り返ることなく乗り込んだ。
ボタンを押してドアを閉め、一階へと向かった。
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