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足を止めることなくそこのホテルから出て、車に乗り込む。
座席によりかかり目を閉じた後、一気にフゥッと息を吐いた。
…なんだか、胸が痛い。
俺のことならどう言ってくれても、なんぼ文句たらしてくれても構わない。
…だがな、…なるはダメだ。
人の大切なものを、そう簡単に貶すんじゃない。
俺も、…よく感情を押さえられたな。
一昔前の俺だったら、手が出ててもおかしくなかっただろう。
そう思いながら、手のひらを見つめた。
しばらくした後、その手をギュッと握りしめる。
そして腕時計を見た。
針は15時半を回るところ。
…家に帰ろう。
なるが待ってる。
俺が帰ったのを見つけると、目をパッチリさせて、うっすら頬染めて、きっとニッコリ笑ってくるに違いない。
そう思うと、無性になるに触れたくて仕方がなかった。
車のエンジンをかけ、真っ直ぐ前を見た。
ゆっくりホテルの駐車場から出ると、まだまだ暑い町中を走らせていった。
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