さざ波-2

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足を止めることなくそこのホテルから出て、車に乗り込む。 座席によりかかり目を閉じた後、一気にフゥッと息を吐いた。 …なんだか、胸が痛い。 俺のことならどう言ってくれても、なんぼ文句たらしてくれても構わない。 …だがな、…なるはダメだ。 人の大切なものを、そう簡単に貶すんじゃない。 俺も、…よく感情を押さえられたな。 一昔前の俺だったら、手が出ててもおかしくなかっただろう。 そう思いながら、手のひらを見つめた。 しばらくした後、その手をギュッと握りしめる。 そして腕時計を見た。 針は15時半を回るところ。 …家に帰ろう。 なるが待ってる。 俺が帰ったのを見つけると、目をパッチリさせて、うっすら頬染めて、きっとニッコリ笑ってくるに違いない。 そう思うと、無性になるに触れたくて仕方がなかった。 車のエンジンをかけ、真っ直ぐ前を見た。 ゆっくりホテルの駐車場から出ると、まだまだ暑い町中を走らせていった。
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