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「…あの、社長よろしいですか?」
その声に、悠哉が幸恵のほうに振り向いた。
「私、安藤幸恵といいます。あの、なるとは営業課のときからの親友で…」
そこまで言うと、悠哉はピンッときたのかすぐにニコッと微笑んだ。
「ああ、君が…。なるから聞いてるよ」
「え、ホントですか!?」
嬉しそうに言葉を返す幸恵の目は、どうみてもハートだし。
もう…、大谷くんいること忘れちゃダメじゃん。
このままここに長居なんかしてられないと思い、私は急いで食器を片付けてきて、悠哉に声をかけた。
「社長、行きましょう」
私の声に悠哉が振り向き頷く。
「それじゃ、失礼するよ」
悠哉がまたも優しく微笑んで挨拶すると、幸恵はニンマリしていた。
お気をつけて~と手を振る幸恵の後ろで、大谷くんは今にも敬礼しそうな勢いでピシッと直立している。
見送ってくれる2人を背にして、私は悠哉の後についていった。
そんな私たちを注目しない人なんていないんじゃないかと思えるくらい、視線が突き刺さる。
でも不思議で、心苦しいと感じたりはしない。
今になって悠哉の言葉を噛み締めた。
バレたほうがいい。堂々としてられる。
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