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急いでサロンから自宅へ戻る。久しぶりに、丹念にメイクをする。
派手過ぎない様に、華やかに。ドレスに着替え終わったのは、三浦の到着する数分前だった。
細めのヒールを履いて、エレベーターを降りた。マンションのエントランスに、黒塗りのセダン。
三浦は、いつもより大袈裟な仕草で、後部のドアを開けた。どうぞ、そんな風に私を迎え入れる。
「いや~、佐野さん。素敵ですね」
「もう、三浦さん。からかわないで下さいよ」
本当は、パーティーなど好きでは無い。それでも、今日は救われた気持ちになる。
「行ってらっしゃいませ」
ドアを開けてくれた三浦が、そう声を掛ける。店の前には人だかりが出来ている。
華やかにドレスアップした、女性タレントや財界人が、次々に店へと入ってゆく。
辺りを見渡すと、榊が此方に向かって歩いてくる所だった。
適度に伸びた背筋、これだけの人々の中でも、それなりの存在感を醸し出している。
「よう、悪かったな。俺独りじゃ格好悪いと思うだろ?」
榊が、店のショーウィンドウを眺めながらそう話す。
「奥様といらっしゃれば、良かったのじゃ無いですか?」
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