第二章

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第二章

まだ、時間は早かった。八時前、何時もなら仕事中の時間。 「佐野さん、ご自宅で宜しいですか?どちらへでも参りますが」 運転手の三浦に、そう問いかけられた。車に乗ったのはいいが、行く先を告げていなかった事に気付く。 「ごめんなさい、三浦さん。ぼーっとしてたわね…自宅に送ってくれる」 「承知しました」 私の様子は、きっと変だと感じてはいるだろう。それでも、黙って運転してくれる。 多分これ迄、何度か運転手は変わっていた。榊の気にいらなかったのだと思う。 彼も、榊のお気に入りなのだろう。 「三浦さんも大変よね、ずっと車で待っていたんでしょ?」 「ええ、今日はそうですね」 「今日は?いつもは違うのね」 「そうですね、社長も気を遣って下さるので、大抵は帰る様に言われます。私としても善し悪しですけどね」 残業代の事だろう、榊はずっと三浦に運転を任せていると聞いた。休みの時などは、ハイヤーで移動する。 「三浦さんは、社長のお気に入りですものね」 「そうですかね」 ルームミラー越しに、照れ臭そうに三浦が笑った。
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