第四章

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先週と同じ道を歩き、ギャラリーへと向かう。途中で思い付き、現金もおろした。 気分は、愉しいお買い物と云った処だろうか。 人影も疎らなギャラリーに足を踏み入れる。受付には、この間と違う女性が座っていた。 敵意剥き出しの視線を思い出して、苦笑いしてしまう。大丈夫よ、貴女達に私は敵わない。 じっくりと、蒼の作品を眺める。オブジェの様な作品に混じって、日常で使えそうな器もある。 出来れば、日常で使う事で蒼を感じたかった。 その中に、深い蒼色をした一揃いのカップを見つける。 手にとってみた、程よい重量感と肌に馴染む質感。一律に生産される物とはやはり違う。 これにしよう、毎日これで飲むコーヒーは美味しいだろう。 六万円と少し、ちょっとした贅沢気分も味わえる。 受付で、買う事を伝えた。 「お届けは、展示が終わってからになりますけれど宜しいですか?」 確かにそうだ、売れて展示が出来なくては意味が無い。 「いつになります?」 「展示今週末迄なので、来週になると思います。宜しければ、此方に記入いただけますか」 一瞬、住所と名前を書くのを躊躇する。
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