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「良いな~、明日からなんだよね」
シーツに包まれ、私を後ろから抱きしめて、蒼がそう話す。
榊の同行で、明日朝には上海へ向かう。
『朝、拾って行くからな。その方が楽だろう』
少しだけ、心が痛む。暫く遠ざかっていた男との関係、榊と蒼、二人の男達。
年上の榊と、若い蒼。ビジネスの世界で生きる榊と、アーティストとしての世界に生きる蒼。
あまりにも生き様が違う。比べ様が無い二人の男。
「ねえ、蒼君…お願いだからさ。お腹撫でるのやめてくれないかな…」
どれだけ鍛えても、若い頃のラインには戻らない。蒼の手が、その部分を撫でる。
「どうして?この感じが素敵なんだけどね」
「気になるの、若くないって主張してるんだよ。そこ…」
止まらない蒼の手を、強めにつねった。
「痛いよ、えり」
「コーヒー飲もうよ、起きて良い?」
「良いよ、でもこのままでね」
蒼はシーツを自分の背中に回して、シーツごと私を後ろから抱きしめる。
「ねえ、この侭でキッチン迄歩けって事?」
「そうだよ、離れたく無いもの」
軽々と、私の上体を持ち上げて床に足を投げ出した。脇の下に両手を差し込んで、立ち上がる。
「あのね、蒼君。とっても歩きにくいのですけど、離して貰えないかな」
「良いけどさ、別に。何も着けていない、えりさんも見たいからね」
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