第五章

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「ねえ、えりさん。カーテン外そうか?」 そう言いながら、ソファーから飛び跳ねる様に立ち上がる。 そんな動きをしながら、バタバタとしない事に感心する。まるで猫の様にしなやかな動きに見惚れてしまった。 爪先立ちするだけで、カーテンのフックを軽々と外してゆく。 カーテンの取り払われた部屋は、予想以上に開放感がある。窓の外には、初夏の陽射しが眩しかった。 軽く掃除機をかけて、荷物が届くのを待った。蒼は、ベランダから愉しそうに外を眺めている。 私も、その横に並んでベランダのフェンスにもたれ掛かる。 「いつも愉しそうね、蒼くんは」 「えりさんは、愉しくないの?」 「どうかな…今は、愉しいよ」 さっきしたかった事をしてみる。横に並ぶ蒼の腕に、指先をちょこんと乗せてみる。 蒼は、白い歯を向けて笑った。
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