第六章

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そうして考えると、私は一度にその両方に出逢ってしまったのかも知れない。 それは、とても幸福な不幸だ。蒼と出逢う事が無く、榊と関係をもっていれば、多分私は榊をパートナーとして躊躇なく選ぶだろう。 榊の家庭関係が円満で、蒼と同じ様な出逢いに至ればのめり込んでいただろう。 世の中は上手くゆかない風に出来上がっている。 蒼には、榊の事を気付かれた…いや、多分私がそう仕向けた。榊には、蒼の存在を告白した。 私の中には打算が有ったのだと思う。例えば蒼が私をふしだらだと感じれば、榊一人に向き合ってみる事が出来た。 けれども、蒼は私を好きだと話した。 例えば、榊が私に愛想をつかせば、蒼と真剣に向き合ってみる事が出来た。 榊はそんな素振りを見せる事も無い。不思議なのは、蒼も榊も私を責めない事だった。
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